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「はい」
「自分で送れますか?」
リューティスが招待状を送る相手は平民ばかりであるが、それでも婚約の相手が貴族の姫であるため、その書き方も貴族のそれに倣う必要がある。
「大丈夫です」
しかしながら、立場柄、貴族と手紙のやり取りをすることもあるリューティスは、そのような形式の手紙も書きなれている。
「よかった。宿も転移魔方陣も越境許可証も用意するって書いておいてくださいね」
「……いえ、転移魔方陣は僕が用意します」
リューティスは魔法師であり、魔方陣魔法師でもある。無論、転移魔方陣は容易く描くことができる。
「あ、そうですよね」
ユリアスは納得した様子でうなずいた。
「送る人はもう決めてますか?」
リューティスは眉尻を下げた。
「…………まだ」
「そうですか」
彼女は少しだけ笑んでリューティスに手を伸ばした。彼女の白い右手がリューティスの左手に触れる。彼女の指先がリューティスの薬指の指輪に触れた。頬に熱が集まるのを感じる。
「今日はどうしますか?」
今日一日、ユリアスと一緒にいると決めているが、何をするのかはまったく決めていないことに気が付いた。
「……ユリはどうしたいですか」
ユリアスは目をしばたたかせた。長いまつげが窓から差し込む朝日に輝く。
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