八章 招待状

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   その美しさに見惚れかけて慌てて目をそらした。 「リュース君?」  ユリアスの手が頬に触れた。益々頬に熱が集まるのを感じて、目を伏せる。 「……なんでもありません」  ユリアスはくすくすと笑ってリューティスの頭を撫でた。 「リュース君、可愛い」  いつも通り言い返すこともあきらめて、リューティスは形だけそっぽを向いた。  それからユリアスの提案で大道芸を見に行くことになった。先日から曲芸団が首都に来ており、平民街の一角で曲芸を披露しているという。 「なおちゃんから聞いて気になってたんです」  『なおちゃん』というのは、リューティスの友人の一人でもある有舞のことである。 「平民街に行くから、ちょっと着替えてきますね」  ユリアスの現在の服装は、貴族の姫としては比較的質素なワンピース姿であるが、あまりに上品すぎる。この服装ではすぐに貴族とわかってしまうだろう。平民街を歩くのなら、貴族らしい服装をしていると悪目立ちし、掏摸(スリ)や人さらいに目を付けられやすくなる。  部屋から出ていく彼女を見送り、リューティスは己の服に目を向けた。リューティスの服装は普段通りの黒づくめである。平民街で目立つことはない。しかし、顔を晒して歩いているとなぜか視線が集まってくるため、いつも通りの灰色のマントを着てフードで顔を隠すべきだろう。  “ボックス”からマントを取り出し、身に纏う。やはり、マントを身に着けていると何となく安心感がある。それは、幼い頃から常日頃、マントに身を包んでいたせいだろう。 .
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