25095人が本棚に入れています
本棚に追加
それに、昨日、弟のライティスに会っている。まだ学園が始まっていないのだから、彼もユリアスと同じように両親のいる自宅にいるのだろう。彼から話を聞いた可能性もある。
「……そうですか」
「先導者の件も伝えておきました」
「……すみません」
リューティスは目を伏せた。あちらもリューティスが先導者を自分に頼むとは全く思っていなかっただろう。とはいえ、他の者に先導役を頼んだことを伝えるのは少しばかり気まずかった。
「はい。……でも、招待状は自分で送ってね」
「……はい」
それは人として最低限の礼儀だろう。リューティスがどう思っているかはさておき、血のつながった親であることには変わりない。
ユリアスは柔らかく笑んだ。
やや混雑した道を西へと歩き、大通りに出る。大通りは今日も真っすぐ歩けないほどに混雑していた。
周囲の騒がしさで互いの声も聞こえないほどに賑わっている。ユリアスに腕を引かれてしばらく歩くと、大道芸が行われている広場へとたどり着いた。
そこには舞台が組み立てられており、曲芸師たちが各々に芸を披露していた。混雑しているが、舞台が高く作られているおかげでどうにか曲芸を見ることができた。
「すごい……」
ユリアスの呟きが、喧騒の中でかすかに聞こえた。彼女はエメラルドグリーンの瞳を輝かせ、舞台に見入っている。
自分ではない他の誰かを見つめるその横顔に、心がざわついた。その感情の理由を理解する前に、彼女が振り返ってリューティスを見上げる。
.
最初のコメントを投稿しよう!