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「え? レイト君となおちゃんですか?」
驚いた様子でリューティスの視線の先を見るユリアスであるが、当然、その姿は見えない。
「ここからでは見えませんよ」
「そうですか。あっちにいるんですよね?」
ユリアスは手でリューティスが視線を向けた方を示した。
「はい」
「じゃあ探しに行こう?」
組まれたままの腕を引かれて、歩き出す。人混みの中であるため、真っすぐ前に進むのは困難で、右に流され左に流され、どうにか前に進んでいくが、徐々に進行方向がそれていく。
「……ユリ、もう少し左です」
「こっち?」
「はい」
時折、リューティスが方向を修正しながら、進むこと数分。不意に人混みの隙間にレイトの姿が見えた。
「──レイト」
リューティスは声を上げたが、周囲が騒がしいために彼は全くこちらの声に気が付かない。
「なおちゃん! レイト君!」
ユリアスが声を張り上げると、レイトはぱっとこちらを見た。人混みの隙間からレイトと目が合う。彼は大きく目を見開いた。
「リュース! ……ユリもか!!」
レイトはこちらに近づいてきた。その後ろにいた有舞の姿がようやく見える。
「え、ユリ? リュースも」
いつもよりも可愛らしく着飾った有舞が、目を見開いた。
「逢引き?」
「……レイトこそ」
レイトに訊ねられて目を背ける。
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