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「ここのお店は紅茶もおいしいんですよ。おすすめは南の国北部産の紅茶のアップルティーです」
隣に座ったユリアスが、品書きの紅茶の項目を指で示した。珈琲と同様に、紅茶も種類が豊富である。
「茶菓子も旨いぞ。特にチーズケーキが」
正面に座るレイトが手を伸ばしてきて、軽食の項目のチーズケーキを指さした。
リューティスはしばし迷って決めた。ユリアスたちの注文する品が決まったところで、手を上げてクインネーを呼ぶ。
「南の国東部産珈琲に牛乳を加えてアイス乗せで。あと、チョコレートスコーンを一つ」
「中央の国南東部産紅茶のレモンティーとイチゴタルトをお願いします」
「おすすめの珈琲に生クリームと砂糖追加で、それからベリーソースがけのチーズケーキを一つ」
「南の国東部産の紅茶のアップルティーとチーズケーキをお願いいたします」
各々に注文をし、二つ折りの品書きを畳んだところで、有舞が口を開いた。
「ユリ、今日は護衛がいないのね」
「リュース君がいますから」
「……あぁ、そうね。これ以上ない護衛役がいたわ……」
有舞は思い出したかのようにこちらを一瞥した。彼らはリューティスの正体を知っている。もしや忘れられていたのだろうか。
「そういえば、最近、リュースの呼び名、よく聞くんだけど」
「…………なんでだろうね」
自分からあの呼び名を名乗ったことなどない。目立つこともできるだけ避けているつもりである。
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