八章 招待状

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  「そのつもりだけどなに」 「……いや、なんで騎士団目指さないんだ?」 「弓部隊に入るためよ」 「騎士団の騎射部隊でもいいだろ」 「いやよ。あたしは地面に足着けたまま戦いたいわ」  一般兵士団弓部隊は、弓使いによって構成される遠距離戦闘部隊である。一方、騎士団騎射部隊は、馬に乗って弓を操る弓使いによって構成されている。両者は似ているようで全く異なる。騎射部隊は場合によっては接近戦闘もこなさなければならないが、弓部隊は基本的に遠距離戦闘専門だ。 「でもお前、騎射得意だろ」 「得意じゃないわ。……とにかく嫌なの」  有舞の本音はよくわからないが、騎射部隊に入りたくない理由があることだけは何となくわかった。 「……ユリは宮廷魔法師目指してるのよね?」  話を強引に変えた有舞にユリアスがうなずく。 「とりあえずは魔法師団を目指していますけど」  宮廷魔法師は、国王軍の魔法師団の中でごく一握りの者がなることのできる、王族付きの魔法師のことである。騎士団の近衛騎士のような立場だ。 「リュースと一緒に働けるといいわね」 「はい」  柔らかく笑う彼女から目をそらす。彼女が宮廷魔法師を目指す理由の一つに気が付き、気恥ずかしかった。 「……なぁ、リュース」 「うん」  レイトに改まった様子で声をかけられて、チーズケーキを食べる手を止めた。 .
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