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「……それが僕の仕事だからです」
同じ答えをもう一度返す。
「どうして戦う仕事を続けるんですか?」
「……それが僕の存在意義だったからです」
「それはもう終わったことなんですよね?」
リューティスは口を噤んだ。終わったことのはずである。だが、今でもあの立場としての仕事はなくならず、戦い続けている。
「…………わかりません」
沈黙の後、ぽつりと答えて、リューティスは目を伏せた。
──戦う必要がなくなったら戦いたくないと思いながら、戦いに生きる日々に安堵しているのはなぜだろうか。
──戦う以外の生き方を知っているにも関わらず、戦いの日々から抜け出せないのはなぜだろうか。
──己の力を好きになれないのに、その力を使い続けているのはなぜだろうか。
──戦いたくないはずが、戦いの日々が終わることへの恐怖を感じているのはなぜだろうか。
──己から戦いに身を投じていながら、戦いを終えれば自己嫌悪と虚脱感に見舞われるのはなぜだろうか。
誰かを守るために、他の誰かを傷つける日々。己の力は大切な者たちを守るためにあるのだと信じている。しかし、大切な者を守るために、他の誰かの大切な者を傷つけている。
強くなったところですべてを守ることなどできないのだと理解している。多くの者を守るには、分かり合えない者を切り捨てるしかない。
それを理解していながら、戦いたくないと思いながら、新たな力を求めようとする己のことが、一番理解できない。
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