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何かがリューティスの頭部に触れた。気配でそれがユリアスの手だとわかった。
「……ごめんなさい。困らせて」
リューティスは首を横に振った。答えられない自分が悪いのだ。矛盾を抱え、本当の答えを薄々理解していながら、それを口にできない自分に、苛立ちを感じる。
「──ま、そのうちどうにかなるでしょ」
有舞があっけらかんと口にして、珈琲に口をつけた。
「ど、どういうこと?」
「仕事が減ればいいのよ」
「……」
「あんたが頑張ればその分、減るでしょ。零番隊隊員さん」
「……そうだな」
レイトはへらりと笑った。
「そのうち追いついてやるから覚悟しとけよ、リュース」
にぃっと似合わない笑みを浮かべたレイトに、リューティスは思わず笑みをこぼした。
軽食を取り終えた一行は、再び大道芸が繰り広げられている広場に戻った。広場は変わらず混雑しており、その喧騒で互いの声はほとんど聞こえなくなる。
それからしばらくの間、大道芸を見続けて、昼食時になったところで有舞たちと共に広場から抜け出した。
「あの水属性魔法師、すげぇなー!」
「それより火属性魔法師の方がすごかったわよ」
前を歩く二人の会話に笑みをこぼしつつ、ユリアスと並んで歩く。
「リュース君はどの人がすごかったと思いますか?」
ユリアスに訊ねられて、リューティスは先ほどまで見ていた大道芸者たちを思い浮かべる。
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