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『……お前はどこまで知ってるんだ?』
『……多分、大体聞いてると思う。師匠がライのことなんとも思ってないのはわかるんだけど、なんかライの話聞いてると、旅に出る前よりもそっけなくなってるみたいで』
ローザンは思考を巡らせた。
己が彼のフードの下の素顔を知ったのは二年ほど前。それまでは私的なかかわりは一切なかった。しかし、短い付き合いの中でもわかることはある。
『……先に言っとくがお前は一切、申し訳なく思う必要はないからな』
『へ?』
『推測になるんだが──』
旅に出る数か月前、リューティスは肉親と和解した。そこで彼は少しずつ肉親に対して心を開きつつあったのではなかろうか。だが、育ての親である元ギルド“月の光”マスターのステラが彼を育て始めた頃からの記憶を失い、おそらくはそれがきっかけで彼は旅に出た。
旅に出たことで何らかの心境の変化があったのだろう。ひょっとしたら、肉親に対して己がどういった感情を抱いているのか、離れてみてはっきりしたのかもしれない。
さらに、ステラが己のことを忘れてしまったこと自体も、影響しているのだろう。彼は様々な理由から『親』を何度も失くしている。ステラの記憶喪失により、再び親と関わることに対して恐怖を感じたのかもしれない。すなわち、親しくなればまた失うことになるのではないかという恐怖を。
そして、最後に、旅の途中での出会いも原因の一つであろう。クレーネーもその一人だ。おそらく、本来、弟であるライが入り込むはずだったリューティスの心の片隅に、クレーネーが入り込んでしまったのだろう。そして、リューティスの心の中に薄っすらとあったライの気配は、クレーネーの存在で上書きされてしまったのではなかろうか。
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