25032人が本棚に入れています
本棚に追加
/2323ページ
旅をしているうちに、様々な出会いがあったに違いない。そして、ステラが己のことを忘れてしまったが故に生じた傷も多少は癒えて、再びクレーネーのような大切な存在を増やしつつあるのだろう。
『お前にとってあのお方──リューティスは兄のような存在だろうし、あのお方にとってもクレーネーは弟みたいなものなんだろう』
『……うん』
『お前が悪いわけじゃない。……やつらの自業自得だ』
ローザンは吐き捨てた。
──戦いを終えた後、血を被ったまま呆然と立ち尽くす、華奢な後ろ姿。
彼が心にどれほどの傷を抱えて生きているのか、自分には想像すらつかない
『あのお方がどこまで自分自身のことを理解していらっしゃるのかわからないが、優しいあのお方のことだ、肉親に対してなんとも思わない自分に後ろめたさを感じていらっしゃるんじゃないか』
『そう、なのかな。なんかすごくよそよそしかった』
『表面上だけでも取り繕うとなさったのだろう』
リューティスは優しい。自分が彼なら、きっと己の肉親など殺めてしまっていただろう。無論、会えば大鎌でその首を斬り落としてしまうだろう。
『なんにせよ、お前が気にする必要はない』
『……わかった』
その声は、少々落ち込んでいるように聞こえた。
.
最初のコメントを投稿しよう!