九章 旅立ち

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   リューティスの使う刀の発祥の地は東の国。この大陸には使い手がほとんどおらず、師を探すのは難しい。リューティスは二つの剣術を使っているが、実のところ、どちらの剣術も完全とは言えない。特に、二刀流剣術である流桜流は、生まれ故郷の村に住んでいた東の国の生まれ育ちの男に師事して習ったものであるが、幼い頃に一年に満たない期間の間、教わっていたに過ぎず、完全には程遠い状態だ。  流桜流は、その流派の発祥の地が今はもうなくなってしまっている。師を探すのならば、基本的には流派発祥の地に向かうのが一番早いのだが、流桜流に関してはその手が使えないのだ。師を探すのはなかなか困難であろう。  それでも、強さを求めるのならば、探す他ないのだ。 「……すごいなぁ。だからリュースはAAAランクなのかな」  ハンクスのつぶやきに冒険者二人は沈黙した。しばしの間、無言が続く。 「……おれたちが高ランクになれない理由が何となくわかった」 「……そうね」  リアムとアズリーは視線を交わし合い、力なく笑った。意気消沈した様子の二人にリューティスは首を傾げた。  旅は順調に進んでいく。途中、何度か下級魔物が接近してきたが、こちらに気が付くとあちらから逃げていった。下級魔物の中には非常に臆病な魔物も多いのだ。  何度か休憩を挟みつつ、東へと進み続け、日が暮れる前にハンクスは荷馬車を止めた。 .
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