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「今日はここで野営にしようか」
「了解」
「はーい」
「……わかりました」
ハンクスの言葉に肯定の言葉を返し、リューティスは歩きながら集めていた乾燥した枝を“ボックス”から取り出し、詠唱破棄した。
「“火よ”」
──火属性初級魔法“火よ”。
木の枝に火が付き、燃え始める。
「お、ありがと」
「……いえ。少し見回って参ります」
魔力で周囲を探れば、特に問題ないことはわかる。しかし、どうにも落ち着かなかった。己の勘が危険を訴えているわけではない。ただ単に、出会ったばかりの者たちと一緒にい続けるのはつらかった。大人数ならば、無言で隅の方にいれば済むのだが、この少人数ではそうはいかない。
「え、あぁ、行ってらっしゃい」
三人の視線を背に感じながら、リューティスは森の中に足を踏み入れた。
一人きりになると、安堵する。一人旅をしていると寂しさを感じてしまうにも関わらず、誰かと共にいると窮屈に感じてしまう。そんな自分に呆れる。
水の気配を感じる方へと向かい、見つけた小さな泉で“ボックス”から取り出した鍋に水を汲む。野営地には水場がなかった。後で三人にも伝えるべきだろう。飲み水は確保できるときに確保しておくべきだ。
鍋を“ボックス”に仕舞ってからふらふらと歩き回り、食べられる果実を見つけて採集した。採集したそれを“ボックス”から取り出した篭にいれ、篭を抱えたまま野営地に戻る。
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