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それから二時間経たずに目を覚ましたリューティスは立ち上がって身体の筋肉をほぐした。
「あ、あの、まだ早いですよ……?」
おずおずとリアムに話しかけられて苦笑する。
「……普段通りに目が覚めただけです」
「そ、そうなんですね」
リューティスは密やかに息を吐きだす。そのうち慣れてくれるだろうかと思いつつ、自分の態度を考えると人のことは言えない。ぎこちない態度を取っているのは、自分も同じなのだから。
リューティスは彼らから少し離れた場所に移動すると、鞘から紫がかった青い刀を抜き放ち、素振りを始めた。
東の空がほのかに明るみ始めたところで手を止めた。刀を鞘に収め、春の森の空気を大きく吸いこむ。わずかに湿った冷たいそれは心地よく身体を駆け巡った。わずかに香る花の甘いそれに頬を緩める。
リューティスが焚火の前に座るリアムに視線を向けると目が合った。先ほどからちらちらとこちらに向けられる視線は感じていた。
リアムは慌てたように目をそらす。
「……少し見回りをして参ります」
「は、はい。わかりました」
彼が目をそらしたままうなずいたのを見て、リューティスは野営地から抜け出した。
昨夜、水を汲んだ泉で顔を洗う。湧き水の冷たさが心地いい。それから昨日使った鍋を取り出して水を汲み、“ボックス”に仕舞った。
腰から吊り下げていた刀を抜き放ち、気配を消し去って森の中を歩く。目的は朝食用の肉の確保だ。
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