九章 旅立ち

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   双子である彼らは、おそらく同時にギルドに冒険者登録をし、パーティーを組んで、同じだけの依頼をこなしてきたに違いない。しかし、アズリーが先にCランクに昇格し、リアムはまだDランクである。つまり、リアムはまだCランクの実力を持っていないとギルドが判断したのだ。  リューティスはスープをかき混ぜる手を止めた。一端鍋を退けると、“ボックス”から取り出した火ばさみで焚火の強さを調節して、鍋を竈の上に戻し、蓋をした。  鍋からリアムに視線を移しながら立ち上がる。 「……手合わせをいたしましょうか」 「え!」  リアムは大きく目を見開いた。 「い、いいんですか? おれ、謝礼金、払えないですよ……?」 「不要です」  手合わせは好きではない。だが、どうにも彼のことを放っておけなかった。  彼はリューティスよりも五つは年上であろうし、自立した立派な大人である。それでも放っておけないと思ってしまったのだから仕方がない。  リューティスは“ボックス”から刃引きされた刀を取り出した。焚火から離れたところで向かい合う。  彼の武器は槍だ。槍の使い手は冒険者に特に多い。対人戦を主とする傭兵や兵士は、剣と槍の使い手が同等程度いるが、冒険者は主に魔物を相手にする。魔物との戦闘ではより間合いが広い槍の方が戦いやすい。  リアムが槍の使い手であるのに対して、アズリーは短弓と短剣の使い手である。ここに至るまで、魔物に遭遇しておらず、彼らの戦いは見ていないのだが、中距離から遠距離の間合いでは短弓を用いて戦闘を行い、間合いが詰められた時は短剣を使って戦うのであろう。 .
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