九章 旅立ち

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   リアムは緊張した面持ちで一歩を踏み出した。間合いを詰め、槍を横に薙ぐ。リューティスはそれを刀でそらし、蹴りを放った。リアムはかろうじて回避すると、リューティスの足に向かって槍を突き刺してきた。膝をまげて避けて、下から槍を蹴り上げる。槍の穂先は上方にずれた。その隙に間合いを詰める。  槍の間合いは広い。しかし、両手槍の場合、槍の柄の長さよりも近い距離まで接近されると攻撃手段が乏しくなる。使えるのは足だけになるのだが、両手で扱う武器は基本的に重い。特に、冒険者は己よりも巨体を持つ魔物との戦闘を前提とした重量のある武器を使用している者が多く、身体強化なしでは持ち上げることすら困難な武器を使用している者もいるくらいだ。  そんな重い武器で突きを繰り出した状態で蹴りを放とうとすると、当然ながら均衡が取れずに体勢を崩すか、体勢を崩すことはなくとも一瞬の隙が生じる。もしくは、それを理解した上で蹴りを放つことを躊躇し、一瞬だけ無防備になる。  リアムは蹴りを放とうとして、案の定、わずかに体勢を崩した。リューティスはそんな彼の膝裏を押し込むように踏みながら、空いている右手で彼の腕を前方へと引っ張った。 「うわっ」  リアムはいとも簡単に地面に転がった。  驚いた様子で目を白黒させている彼に左手を差し出す。 「あ、ありがとうございます」  彼はリューティスの手を取り、立ち上がった。 .
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