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「今の何ですか?」
「体制を崩しかけたところをついただけです」
あっけなく負けたというのに、彼の表情は明るい。
「もう一度お願いします!」
笑顔で乞われて、リューティスは苦笑しつつ再び彼と距離を取った。
日が昇るまで手合わせを続けて、アズリーとハンクスが起きだす気配がしたため、手を止めた。
「どうかしましたか?」
「そろそろ時間です」
「あっ……」
リアムは空を見上げて小さく声を上げた。手合わせに集中していて時間の経過に気が付いていなかったようだ。
リューティスは刃引きされた刀を“ボックス”に仕舞うと、竃に近づいた。弱火で出汁を取るために煮込んでいた鍋の蓋を取ると十分出汁が出ているようだった。竈の下の焚火を見ると、ほとんど火が消えかけていた。“ボックス”から乾いた枝を取り出して焚火にくべて、火属性魔法で火を起こしなおす。
菜箸で骨を引き上げて、鳥型魔物の肉と野草を入れて、さらに過熱してく。
「おはよう、リュース」
「お、おはようございます、リュースさん」
「……おはようございます」
起き出したハンクスとアズリーに挨拶を返し、鍋に視線を戻した。
しばらく過熱して肉に火が通ったところで竈から鍋を退ける。
「旨そうだな」
鍋を覗き込んできたハンクスに、“ボックス”から取り出した器に盛ったそれを手渡した。
「いいのか?」
「そのつもりで作りましたので」
「うーん、追加報酬出すね」
「不要です」
「君が不要でも俺には必要だから」
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