閑話 届けられた招待状

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   風の噂であの子が街に戻ってきていると聞いた時、なぜ会いに来てくれないのかと思わなかったわけではない。しかし、そう思うこと自体、おこがましいことだ。なぜなら、自分たちはあの子を捨てたのだから。  原因はすべて自分たちにあるわけではない。だが、あの子を捨てたという事実に変わりはなく、表面上、あの子と和解した今でも、あの子との深い溝はそのまま。  そして今日、血のつながったあの子からの手紙を、複雑な気持ちで受け取った。そもそもこれを受け取る権利は己にはない。それでもあちらは礼儀としてこれを送ってきたのだろう。  綺麗に整ったあの子の字を見つめる。自分たちがあの子と一緒に暮らしていた頃は、あの子はこんな綺麗な字は書けなかった。幼子らしい、かろうじて読めるような、たまに鏡文字が混じった拙い字を書いていたというのに、いつの間にこのような美しく整った字を書くようになったのだろうか。  他人行儀な文章が並ぶ手紙と共に、同封されていた招待状。そこに並ぶ名前は、確かに自分たちが付けたあの子の名前。  旅に出て、あの子はあの名前を再び名乗るようになった。しかし、あの名前に執着があるのではなく、使っていた名前が使えなくなってしまったからというただそれだけの理由から名乗っているのだということは、見ていて明らかだった。 「……幸せになるのね、あの子は」  様々な物を背負って生きるあの子。自分たちが教えられなかった、与えられなかった、奪い去ってしまった様々なものを、あの可愛らしいお姫様から受け取って、あの子は幸せになる。  今、あの子は様々なものを取り戻しつつあるのだろう。 「……ごめんなさい、リュース。わたしたちの、可愛い可愛い息子」 .
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