十六章 実地試験に向けて

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   初夏の眩しい朝日がまだ人通りの少ないギルド都市を照らし始める。ここ数日で気温が徐々に上がり始めていたが、半袖の服を着用している者はほとんどいない。  それは、この街に行き交う者のほとんどが冒険者だからであり、日常的に街の外の森やら草原やら岩場やらを歩く冒険者は、そこに生息する虫から身を守るため、もしくは石などで切り傷を負わないために、長袖に長ズボンが基本だからだ。  リューティスも例外ではない。だが、氷属性の使い手故に暑さに弱いリューティスは、長袖の服を着用しているとこの時期であっても油断はできず、本日より温度調節の魔法具を身に着けている。  宿の隣の空き地で朝の鍛錬を行ったリューティスは、一端宿に戻り、それから朝食を取るべく近くの食堂へと向かった。朝食を取り終えると、ギルド“月の光”支部へと足を向ける。  昨日、Sランク昇格のための実技試験を終えた。ひとまずその結果を聞かねばならない。それから、実地試験の日程について告げられていないため、そちらも確認する必要がある。  実地試験の日程がなかなか決まらないことは多々ある。そもそも、Sランクの実地試験のためにはSランクに相当する依頼が必要になるが、Sランク以上の依頼というのは少ないのだ。その少ないSランク依頼の中でも、難易度が比較的低い依頼を探し、事前にギルドが調査を行った上で、受験者がそれを受けることになる。  この調査を行うのにも、そのランクの冒険者一人では難しいため、そのランクの冒険者二人か、もしくはそのランクよりも上のランクの冒険者が調査を行うのである。Sランク昇格試験ならば、当然、依頼の調査にSランク冒険者が二人か、もしくはSSランク冒険者が必要になる。 .
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