十七章 実地試験

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   静寂に包まれた執務室の中、リューティスは小さく息を吐きだして、執務室とは反対側の隣の部屋へと移動した。  寝室で隊服と銀のマントに着替えて、部屋を後にする。向かう先は零番隊の訓練部屋である。なぜローザンがリューティスの昇格試験の試験官を引き受けたのかわからないが、ローザンが不在ならばリューティスが隊の取りまとめを行う必要がある。そもそも、リューティスは隊長であり、本来ならば隊の取りまとめを行う立場なのだが、休暇中のために彼に指揮を任せている状況である。  零番隊専用の訓練部屋にたどり着く。中に足を踏み入れると、多くの隊員が個々に鍛錬を行っているところだった。  彼らはリューティスに気が付くと手を止めて、こちらに向かって敬礼をする。リューティスも彼らに向かって敬礼を返した。 「お疲れ様です。鍛錬を再開してください」  リューティスが命じると、彼らは手を下ろし、鍛錬を再開させた。  そんな中、入り口の一番近くにいた隊員がこちらに向かって駆けよってくる。 「お疲れ様です。……昇格試験中と伺っておりましたが、抜け出していらしたのですか?」  ローザンから聞いていたのだろうか。隊員の言葉に苦笑する。 「いえ、試験は終わらせました。時間つぶしをする必要がありましたので、こちらに参りました。ローザンは人前に出られませんので、二日ほど休みになります」 「あぁ、そういうことですか。了解いたしました」  隊員は納得した様子でうなずいた。 .
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