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そのまま歩いて一周したところで足をとめた。すでに限界を迎えて訓練部屋の中央辺りに敷いてあった茣蓙の上で横になっている者もいるが、まだまだ限界は遠いと走り続けている者もいる。リューティスは体力に特化しているわけではないため、体力自慢の隊員たちには敵わないのである。
茣蓙の上で寝転ぶ隊員に近づく。その一人の背中をつついた。
「……へ?」
間の抜けた彼の声を聞きながら、フードを下ろし、その背後に腰を下ろした。
「っ……び、びっくりした……」
こちらを振り返ってがばりと身体を起こした彼──零番隊の新人であり友人でもあるレイトのつぶやきに、思わず笑みを漏らす。
「何周できましたか?」
「え? あ、えぇっと、七周……っス」
「増えましたね」
ふわりと笑うと、レイトは嬉しそうに笑った。
「隊長―、そういうことなさるから隊長馬鹿が増えるんですよー」
レイトの背後に座っていた、空間属性の使い手であるユンフが、こちらを振り返った。
「や、それ、ユンフさんがいっても説得力が……」
「え? なんか言った?」
「な、なんでもないっス」
笑顔のユンフに顔を引きつらせて勢いよく首を横に振るレイト。仲がいいのか悪いのかわからないが、レイトは順調に零番隊に馴染みつつあるようだ。
「あ、そういえば、招待状、ありがとうっス」
「……はい」
婚約式の招待状のことであろう。気恥ずかしくなって目をそらした。
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