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「隊長のウェディングドレス、楽しみにしてるっスからね!」
「…………」
リューティスは沈黙した。彼はリューティスの性別をよく理解しているはずだ。海で一緒に泳いだこともあるし、一緒に温泉に入ったこともある。理解していてなお、なぜ彼はこのようなことを口にするのだろうか。
「……僕は男です」
思わず素の口調でぼそりとつぶやくと、レイトはけらけらと笑った。
「知ってるっスよー。で、着ないんスか?」
「着ません」
きっぱりと言い切ったが、もし同じことをユリアスから言われたとしたら、断り切れる自信がない。彼女の願いならば、彼女が身の危険にさらされることでもなければ、大抵のことは叶えるつもりである。
「絶対にきれいなのに……。そうだ、ユリとおそろいのドレス着ればいいんじゃないスか?」
リューティスは沈黙した。もし、婚約式当日にユリアスと揃いのドレスが用意されていて、ユリアスにそれを着てほしいといわれてしまったら、リューティスは確実に断れない。
「絶対に似合うっスよ!!」
リューティスは小さく息を吐きだした。
「……レイトが着ればいいと思うよ。有舞とお揃いで」
「オレが着たら笑いものになるだけじゃんか。……てか、婚約とかまだ先だし」
口調を変えたリューティスに対して、レイトも敬語を取り払った。唇を尖らせてそっぽを向いた彼の頬はわずかに赤くなっていた。
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