十七章 実地試験

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  「……しないの?」 「や、オレも有舞も平民だし。貴族とは違う」  リューティスは首を傾げた。 「でも早い人は十五、六で結婚するって聞いたけど」  幼い頃に住んでいた村では、十五歳の少女が出産し、赤子を背負って畑仕事に励んでいた。 「そりゃ田舎じゃそうだけど、さすがに首都の住民でそこまで早く結婚するやつは滅多にいない」 「そうなんだ」 「まぁ、中には早いやつもいるんだけど、……先輩に聞いた話だと、学園のやつらは卒業して就職して三年くらいしてから結婚し始めるらしい。女はもっと早いらしいけど」  つまり、収入が安定し、ある程度の貯金ができ、家族を養えるようになってから、婚姻を結ぶということなのだろう。 「でも、今のレイトなら有舞一人くらいなら養えるでしょう?」 「え、いや、ま、まぁ……、うん」  ギルド“月の光”の隊員の月給はそれなりにいい。零番隊の隊員はその中でも一番月給が高いのである。見習いとはいえ、零番隊の隊員であるレイトは、それ相応の給金をもらっているはずだ。自分と配偶者一人くらいなら、贅沢しなければ十分に養えるだろう。  レイトの頬が再び赤く染まった。 「……そうだけどさ、さすがに卒業してからだなぁ。後は有舞次第」 「……そうだね」  レイトの気持ちもあるが、相手である有舞の気持ちもある。 「案外、オレの結婚よりも先にアンドリューの婚約かもな。相手、まだいないっぽいけど」  アンドリュー・ヴィルソンはリューティスとレイトの友人の一人であり、リューティスの婚約相手であるユリアスと同様に公爵家の生まれである。しかし、彼女とは違い、彼は現在、すでに公爵当主として働いている身である。 .
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