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本来、最高位のランクを持つリューティスにとって、このランク昇格は当然のことなのだ。
「“雪妖精”様、Sランク昇格、おめでとうございます」
受付嬢は珍しく笑みを浮かべて、深々と一礼した。しかし、その笑顔はすぐに消え去る。
「お祝いの宴は午後三時より行われます」
「……わかりました」
参加しなければならないということはないだろう。特に、前に立って何かを話すわけでもない。リューティスいなくとも誰も気にしないに違いない。
「では、これで」
リューティスは会釈をして、受付から退いた。このまま依頼を受けようかと思ったが、まとわりつくようないくつもの視線を感じて、この場からいち早く離れることに決めた。手合わせの申し込みでもされたら、面倒なことになる。
建物から出つつ、気配を薄める。目的もなく街を歩き、ふと気が付く。そもそもこの街にはランク昇格のために立ち寄ったに他ならない。このまま滞在を続ける理由がないのだ。
踵を返し、来た道を戻る。宿にたどり着くと、借りている部屋に戻る。忘れ物がないことを確認し、受付に足を運んで、連泊を取りやめる旨を伝え、いくらか戻ってきた宿泊費を腰の革の袋に仕舞うと、宿を後にした。
大通りに出て、通り沿いの店で食料の買い足しを行うと、リューティスはそのまま街の東の門へと向かった。
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