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この時間に街の外に出る者は少ない。列に並ぶこともなかった。門にいたギルドの職員にギルドカードを提示し、街の外に出る。
そこに広がるのは、広大な草原。蛇行しながら伸びる馬車道に沿って、ぽつりぽつりと家が建っている。道の脇には木製の杭が打ち付けられ、柵が巡らされている。この街の周囲は、放牧地となっているのだ。
ゆっくりと草を食む草食の魔物。時折聞こえる間延びした鳴き声。
のどかな風景を横目に、リューティスは東へと進み始めた。
しばらく歩き続け、草原から森の中へと足を踏み入れる。昼に一度だけ休憩を挟み、東に向かって歩き続け、森の中で夜を越して、翌朝、馬車道からそれながらさらに半日歩いたところで、人ではない相棒の巨大な狼──皇狼のセネルを喚び出した。
その背に跨り、さらに東へと進む。
森の中は初夏の若い緑色に染まり、夏の花が蕾を膨らませていた。
「……夏ですね」
『うむ』
森の中、適当なところで足をとめて昼食を取りながらつぶやくと、リューティスの背後に座りこんでいたセネルから念話による肯定が返ってきた。
リューティスとセネルはさらに東へと進んだ。そして、翌日、遠目に大きな街が見えてきた。ここから先、しばらくは大きな街がないため、立ち寄る予定である。
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