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『寄るのか?』
『えぇ』
走りながら念話をよこしたセネルに、その背に跨ったリューティスも念話で返す。
『そろそろ歩きます』
『うむ、承知した』
セネルは徐々に歩を緩め、やがて足をとめた。
「……では、また」
『うむ』
彼の長い尾がリューティスの頬を撫でた。彼の足元に魔方陣が広がり、彼は姿を消した。ここから先、街にたどり着くまでは徒歩である。
眼下に見える街までは、一般的な冒険者の足ならば、歩いて一日といったところだろう。道から離れたところを走っていたリューティスは、街道がある方へと歩く方向を修正しつつ、街に向かって歩き始めた。
なだらかな斜面を下ると、徐々に木々がまばらになり始めた。それからさらに進むと、草原にたどり着く。その街は草原に広げられた畑に囲まれていた。
農業を営む者が道具を置いているのだろう小屋が、ぽつりぽつりと建てられている。真昼間のこの時間、畑作業を行う農民の姿がちらほら見えた。
ほとんどの畑には若い緑色が生い茂っていた。この時期はよく虫が付く。虫よけの魔法薬を撒いたり、手作業で虫を捕らえたり、農民たちは忙しそうに働いていた。
そんな様子を横目に、街へと向かって歩を進める。街から他の街へと向かう人々や馬車とすれ違いながら、街に近づいていく。
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