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「えぇ、そうですが」
ちらりとユリアスの方を見ると、彼女は苦笑していた。おそらく、彼女はわざとクレーネーに話したのだろう。
学園に通えば、いずれはリューティスの弟と会うことになる。弟のライティスはリューティスとよく似ている──正確にはリューティスの生みの母親によく似ている。弟のライティスの方が若干、男性らしい容姿をしているが、それでも一目見ただけで兄弟とわかるほどによく似ているのだ。クレーネーがライティスと会えば、すぐにリューティスの弟であるとわかるだろう。
だからこそ、彼女は先に弟のことを彼に話したのだろう。リューティスがあまり自分から話したくないことを、クレーネーの方から訊ねるようにと。
「おそらくクレーネーよりも一つ下の学年だと思いますので、最初の一年間は会う機会は少ないかと思いますが、同じ中等部となると廊下ですれ違うこともあるでしょうね」
「そうなんだ……」
苦笑しているユリアスが口を開いた。
「ライ君……、リュース君の弟君はリュース君にそっくりだから、見たらすぐにわかると思いますよ」
「あぁ、……確かにそっくりだったな」
「リュースよりも男っぽい顔してたけど」
レイトの感想はさておき、リリスの鋭い言葉がなけなしの自尊心にぐさりと突き刺さった。ライティスとリューティスの顔立ちの違いは彼らも感じていたことであったようだ。
「そうなの?」
「リュースのちっちゃい頃が簡単に想像つくくらいにそっくりだぞ。リュースの方が美人だけどな!」
「ちっちゃいリュースって感じよね。リュースの方が女顔だけど」
「すごくかわいいですよ。リュース君の方が可愛いけど」
レイトと有舞の言葉がさらに突き刺さり、ユリアスの言葉に喜びを感じてしまった己に落ち込みそうになった。
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