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春の朝の空気は、程よい湿気を含んでいて、気持ちがいい。甘い花の香りが混じったそれを大きく吸い、大きく吐き出した。
「師匠、終わり?」
「そうですね……」
クレーネーに訊ねられて苦笑した。
朝の鍛錬を行っていたが、現在、鍛錬に使わせてもらっているアクスレイド公爵家のこの屋敷の裏庭は、あまり広くない。手合わせをするにはやや手狭なのだ。
そんな空間で、リューティスは毎日の習慣に従い、クレーネーと共に素振りを行っていた。
この広さでは満足に手合わせを行うこともできず、素振りを行うのが精いっぱいだ。
「……ギルドの訓練部屋に行きましょうか」
「うん」
クレーネーは手合わせがしたかったのか、リューティスの提案にすぐに首肯した。
「では、朝食を食べたら参りましょう。今日はそのあと、部屋を探しに行きます」
「あ、うん。わかった」
部屋の用意もあるが、リューティスが首都を出立した後の彼の教師役も探さねばならない。こちらに関しては、リューティスにはまったくつてがないため、学園に頼るか、もしくはユリアスかアンドリューに紹介してもらわねばならない。なんにせよ、後回しだ。
素振りを続けていると、一人の侍女がリューティスとクレーネーを呼びにやってきた。どうやら朝食の準備が整ったようである。
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