月夜の想い、一雫

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 どれだけ歩いたことでしょう。振り返ると街はもう遥か遠くになってしまいました。  どれだけ歩いたことでしょう。日も傾いて、もうすぐ帳も落ちようものです。  どれだけ歩いたことでしょう。ただひたすらに目の前の道を歩いた。 「ここは?」  たどり着いたのは、大きな糸杉の森でした。  あてもなくさまよい続け、たどり着いた森に、何も考えずに入っていく。  あたりはもう暗く、虫の声さえも聞こえない。見上げれば乱立する糸杉に見下ろされ。  怖いと思える糸杉が、なぜか身近に感じることができた。  森の中を、奥へ奥へと進む中、ひらりと舞う光の欠片が目に入る。  それはゆっくりと森の奥に入っていく。黒い森の中で見つけた光を、追いかけていく。  終わることのない道への不安はどこかに消え、それを追いかけた。  そう、それはまるで、失くしたものに追いすがるように。  光が導く道の先、開けた場所にたどり着く。  そして、そこで見た景色に言葉を失った。 「こんなに綺麗な場所があったなんて、知らなかった」 そこには広大な湖が広がっていた。それは鏡のように周りの景色を映し、もうひとつ、別の世界を見ているかのよう。
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