月夜の想い、一雫

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 伝えたかった言葉が次々と。そんな言葉を、只々、聞いていました。  雨を逃れて、たどり着いた湖で見つけた女性は、一途で綺麗な心の持ち主だった。  ひとりの人を思い、言葉を重ねる。あまりに美しく、聞き惚れてしまった。    その心の痛みを癒してあげたい。清き心を慰めてあげたい。そう思ったとき、見えてしまった。  『死蝶』が。  彼女の周りを漆黒の蝶が取り巻く。一匹二匹じゃなく、10匹、いや、20匹?はいただろう。  一匹や二匹ならすぐには何も起こらない。可能性を考えるだけでいい。だけどあの量は…。きっともうすぐ死んでしまう。  どうして?こんなにも美しい人が死ななければならない?どうして、こんな残酷な運命を…。  嘆いているのもつかの間、彼女が言葉を紡ぎながら歩き始める。 「ああ、あの暖かな光に触れれば、あなたの所へいけましょうか。もし、望んでも良いのなら…魂だけでもあなたと一緒で有りたい」  女性は湖に足を一歩踏み入れる。浅瀬から徐々に、湖の真ん中へ足を進め、足首、脹脛、そして膝、湖の中心に向かうほどに深くなっていく。  ダメだと思った。この湖は真ん中が一番深くなっている、あの光に触れようと足を踏み込んだが最後、本当に死んでしまう。  だから傍に行こうとした。できる限りの速さで、それを止めなくちゃいけないと思った。だから急いだ。  湖の端から全力で駆けた。彼女に追いつくために。彼女を少しでも長く生きさせたいと思う気持ちだけで。  女性が湖の中心にたどり着くその時、蒼い蝶が、ふわりと飛んだ。
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