記憶の中の家族

4/6
前へ
/43ページ
次へ
村の洗濯物の中から男の子用の服をこっそり盗んで着替えると、人だかりのできている村の広場に行ってみた。 そこでは、ちょうど父が処刑されるところだった。 父は一瞬私を見て、目だけで微笑むと、槍で貫かれて絶命した。 私は一滴も涙をこぼさなかった。 泣かないと、母と約束をしたから。 母が死に、父もこの世を去った。 私に残されたのは母の形見の短刀と、母の知り合いのいる住所だけ。 母から親友だというその人への手紙を持って、私はすぐに移動を始めた。 これ以上ここにいてはいけない。 そのことだけは、幼い私にもわかった。 父と母が守ってくれた命を、失うわけにはいかなかった。 自分の夢を自分の手で掴みとる。 母の言った言葉を叶えるために、私は旅に出た。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加