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「あれ、渡辺君もそのゲームやってるの?」
「え、落合もやってるの?」
「ウチは最近始めたんだ。でも初心者だから全然わかんなくて……」
「まあ、これ結構マイナーだしな……良かったら一緒に協力クエストやる?」
「え、いいの? ありがとう!」
本当は、今初めて見たゲームなのだけれど。跡で急いでインストールしなくちゃ。
今日もウチは嘘をつく。
君に少しでも近づくため。
「おはよ、渡辺君」
「おー落合、おはよ。昨日あれから寝た?」
「ううん…渡辺君に負けたのが悔しすぎて、攻略サイト漁ってたら朝だった」
「マジか、それ僕のせいじゃん」
「でもおかげで次は勝てる気がする! またやろうね」
「望むところさ」
本当は、オンラインゲームの中とはいえ、君と一緒にいれたことが嬉しくて寝つけなかっただけなのだけれど。
今日もウチは嘘をつく。
君とこれからもも遊ぶ口実のため。
「ねえ、啓って里菜が好きなんでしょ?」
「えっ……何でそれを」
「幼馴染の観察眼舐めんな。協力したげよっか?」
「マジで? お前ってホント良い奴だよな。ありがとう」
本当は、私が渡辺君から里菜を遠ざけたい思いの方が強いけれど。
今日もウチは嘘をつく。
大事な幼馴染と私の両方が幸せになるため。
「あのっ……ウチ、渡辺君が好きなの! 付き合ってもらえない……かな……?」
「落合……気持ちは嬉しいけど、ごめん……その気持ちには応えられない」
「……それは、里菜が好きだから?」
「え?」
「だって、みんな言ってるよ? 渡辺君、モテるのに全然彼女とか作らないし、ずっと里菜とくっついてるし……」
「……里菜といるのは、あいつがくっついてくるからだよ。彼女作らないのは、そういうのが面倒くさいだけ。里菜は関係ないよ」
「そっ……かぁ……聞いてくれてありがとね」
「いや。こちらこそありがとう……本当にごめん」
「ううん。聞いてもらえただけで十分だから。でも、もし良ければ、これからも友達で居てくれないかな……?」
「勿論だよ。落合とゲームするの楽しいし」
「……ありがとう」
聞いてもらえただけで充分だなんて、そんなわけない。半年かけて仲良くなって、いつか付き合える日をずっと夢に見ていた。
今日もウチは嘘をつく。
君を困らせないため。
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