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「……アンタ、真君のこといい加減解放してあげなよ」
「なんのこと? 私は別に真さんを縛ってなんていないんだけど」
「黙って聞いてりゃアンタっ……!」
「……気を悪くしたなら謝るよ。ごめんね。私はただ、みんなもっとアプローチすれば真さんと付き合えるのにな、っていうことだけだよ。なんならまひろちゃんに協力するよ?」
「誰がアンタなんかに頼むもんかっ……!」
悔しいけど、一瞬心がぐらついた自分に嫌気がさす。あんな女に、渡辺君は絶対渡さない。
今日もウチは嘘をつく。
嫌いな相手に、精一杯の虚勢を張るため。
「おい、落合」
「渡辺君。どうしたの?」
「お前、里菜を呼び出していろいろ言ったみたいだな。胸ぐら掴まれたって、里菜めちゃくちゃ怖がってたぞ」
「っ……それは……」
「まさか、振られたのを里菜のせいにしてるのか? 悪いけどもう話しかけないで。僕の大切な人を傷つける奴と、仲良くなんかしたくないから」
「……ウチの言葉には耳を貸さないって感じだね。わかった、今の言葉で好きだった気持ちとか冷めちゃったし、もうただのクラスメイトに戻ろっか」
口から出る自分の言葉に締め付けられる。もっと一緒に居たい。でも、他でもない彼が、それを許さない。
本当は、まだ……
今日もウチは嘘をつく。
ーーウチの心を、これ以上壊さないため。
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