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僕と真は幼馴染。小さい頃から何をするにも一緒。今はお互い違うグループに居るけれど、お互いがお互いの一番の親友であることに変わりはない。
「なあ、渡辺と倉科って仲良いよな」
「噂じゃもう付き合ってるって話だぜ」
真が僕に何の報告もなく付き合っている筈がない。が、少し探りを入れよう。
僕は自分の母に「真が里菜って子と付き合ってるらしい」という話を吹き込んだ。
そして次に、佐々木に「お前の好きな里菜ちゃん、付き合ってるって噂あるよ?」と言って彼が行動するよう煽った。
「直、お前母さんに里菜と付き合ってるって言っただろ……」
「いや? 僕は『あくまで噂だよ』って伝えたよ」
「それがお前の母さんからうちの母さんに伝わるまでにそう変わったのか……え、お前もその噂信じてるの? こないだ佐々木も聞きにきたんだけど」
「さあ?」
「おい……僕が直に一番に報告しなかったことなんてないだろ?」
「ははっ。ごめんね、冗談だよ」
ペタペタと廊下を歩く倉科里菜の足音が完全に消えると、僕はゆっくりと視聴覚室の陰から顔を出す。やはり、落合まひろは真が好きだったのか。にしても、里菜は本当に狡猾な女だ。ドス黒いオーラをまといながら、絶対にその尻尾を掴ませない。真も今は里菜に盲目になっていて、僕の話でさえまともに聞きはしないだろう。あいつは佐々木に任せるとして、まずは落合まひろから消えてもらおう。
僕は視聴覚室で見た一部始終を真に話した。あの女のことだ、真に聞かれればおずおずと事の顛末を震えながら語るだろう。
そうして、落合まひろは真の前から姿を消した。
「……おい直、聞いてるか?」
「えっ……ああ、もちろんだよ」
倉科里菜の排除方法を考えていたとは言えず、適当に相槌を打つと、真は本当かー? と無邪気な笑顔で笑いかけた。
「いや、でも直が話聞いてくれてホント助かったわ、サンキュ」
「当たり前だろ、僕と真の仲じゃないか」
「さっすが直、僕の一番の『親友』だな!」
その言葉に僕は力強く頷く。
でも、本当は、……
今日も僕は嘘をつく。
ーーこの恋心を、隠すため。
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