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ユウは家族への思いを断ち切るように、ストーブの小さな扉を閉めた。台所は唯一の光を失い、真っ暗闇と化した。目が慣れたころ、窓の外から青白い雪明りが差し込んできた。そのせいでニコライの顔がより一層蒼白に見えた。
兄のように慕ってきたニコライ。
哀しげな瞳はけしてユウを行かせたいわけではなことを物語っている。
ニコライはユウのそばまで来ると手を差し出した。ユウはがっしりとした手を掴む。その手は軽々と細い体を引っ張りあげる。それからぎゅとユウを抱きしめた。
「小さな妹よ、いつの間にこんなに背が伸びた?」
声を押し殺している。ユウは体を離し、ニコライを見つめ返す。大好きな兄の顔を目に焼きつけようとした。それなのに肝心な時に涙が邪魔をして霞んでしまった。
「ルナ、きみは強い……だからきっとだいじょうぶ」
その言葉は、まるで自分自身に言い聞かせるようであった。
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