<2>月と呼ばれた少女

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 一方イーゴルは、後部座席にいるユウを外へと連れ出す。シートに置いてあった買い物袋からヘルメットを取り出した。 「私の可愛い娘よ……」  イーゴルは言った。ユウにヘルメットを被せた。 「さあ行くんだ」 「あれに乗って海に行くの……?」  真っ暗な氷の海を目の前に、ユウは不安になった。 「ルートはコーリャが確認しているから、転落することはない。──さぁ早く。ニコライ、彼女を連れて行くんだ」  イーゴルの目に薄っすら涙が光っている。さっとハグしてから、スノーモービルに跨り、ニコライの背中にしがみついた。 「出るよ」  ニコライが声をかける。エンジンをふかすと勢いよく走りだした。  ユウは恐ろしさのあまり振り向く余裕すらない。ようやく振り返った時には、闇に紛れて何も見えなくなっていた。
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