2/3
前へ
/3ページ
次へ
 答えはNOだ。だけどそれをキッパリと断言する程の勇気は僕にない。結局また誤魔化すのだ。そんな自分に嫌気がさす。変わらない故郷の寂れた田舎の雰囲気も、他県からは異様に聞こえる訛りも、全部全部嫌になる。  ここから走って逃げ出してやりたい。  どうせもう二度と会うことはないだろう。  いや、そう言ってあの日も別れた、けれど今確かに目の前にいる。  全く気乗りしない昔話に花を咲かせるふりをしながら思う。  この状況はきっと逃げてばかりで辛いこと、傷付け傷付くことに向き合おうとしない自分についにツケが回ってきた結果なのだと。自分でもあまりに悲観的だと自嘲的になりさらに笑顔がぎこちなくなる。  「じゃあ、俺こっちだからもう行くわ」  そう言うと彼は僕と逆の方向へと身を翻して向かっていった。  僕は内心ホッと安堵した。だがすぐに激しい後悔がその安堵を飲み込んで心にペンキを零したようにじんわりと広がっていく。僕は呆然と彼と別れたまま道の真ん中に突っ立っている。  街路樹の下に積もる落ち葉がカサカサと乾いた音を立てる。その音が僕の心から湿り気を奪い取っていく。唇が乾く。唾を飲み込む音さえ響くような静寂。木枯らしがケタケタと僕を嘲笑するように逆巻く。街並みを秋色に染める落ち葉に映える夕日が眩しくて目をひそめる。     
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加