第一話【村の掟】

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 そんな風に考えながらも、実際にしてもらった方がわかりやすいため僕は何も言わずその様子を眺めた。  やってもやらずとも物覚えは良い方だし、作法そのものも他の村と遜色ないため、恐らく明日の朝には普通に祈りを捧げているだろう。  ……と、祈りの作法そのものは特に気にならなかった。そんな中で僕が若干の疑問を感じたのが、 「……にしても、この村では朝に祈りを捧げるのか」 「ええ。不思議に思われますか?」 「まぁ、不思議というか……」  ──普通なら他の村と合わせるものじゃないのか? という疑問が浮かんだだけだ。  他の村では、食事前に祈りを捧げるのが多かった(というか、それが世の習わしというものだ)が、この村ではどうやら違うようだ。    あくまでも祈りを捧げるのは水の精霊の恩恵が受けられるように──要は、『雨乞い』とほぼ同じ意味合いなのだろう。  水の精霊のおかげで水不足の心配が無いということは、祈りを捧げる事で精霊さまが雨を降らせてくれる……そういった仕組みでこの村は機能しているのだ。    だったらそんなものなのか、と他の村とは異なる習慣に目を細める。
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