第一話【村の掟】

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 笑いながらもどこか複雑そうな表情を浮かべる彼の考えは分からなくもないが、やはり僕としては「現代風」の考えが強いため、古くさいと語る彼の話には同調しかねた。  このご時世、そのような方法で雨を降らせてくれる神様も精霊もいないことは、皆が知っている。    雨乞いの儀式のために贄を捧げたところで、雨が降る確証なんてどこにも無い。  昔はその事に気付かなかったのだろうが、今ではその行為は無意味であるとされている。  皆が、生け贄を捧げる行為について無駄であることに気付かされたのは、王都の制定したとある法案によるものだった。 『生け贄禁止法令』──説明不要とも言えるこの法案は、要するに魔法や儀式など、対価を支払う必要のある取引において、あらゆる生命を対価にしてはならないという法である。  この法案が提示されたときには多くの反対意見もあったそうだが、そういった儀式において支払われる贄の大半が人命であったため、それらの意見は一蹴。  贄とされるもののほとんどが人間や動物で、その贄の調達の際に犯罪……いわば『誘拐』や『強奪』のような、本来神聖なる儀式を行うための贄のはずなのに罪に手を染めてしまう者が多くいたことが問題であったからだ。  まともな儀式、というのがどんなものなのか僕には分からないけど、真面目に取り込んでいた人たちからしてみれば迷惑極まりないだろう。
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