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『水の精霊』なる少女、エリアの暴走からおよそ数十分。
飛んでくる礫から何とか逃れながらも、エリアの居る泉から数メートルほど距離を取った太めの木の影へと身を隠し、呼吸を整える。
後方では、涙の礫が木々にぶつかり砕け散る。
涙を流す人外は、人命を軽く奪うことのできる力を、己の感情にまかせるがままに振るう。
その衝撃が大地を、そして大気を揺らし泉と鳴動するように波紋を残し、より一層近づくことのできない空間を造り上げてゆく。
僕が隠れていた木にもいくつもの礫が激突し、その衝撃に耐えきれなくなった木はなぎ倒され、その度に別の木へと身を隠す。
先ほどからそれの繰り返しだ。状況を変えるための打開策が未だに見つからずに、ただひたすらに逃げて隠れるだけの状況が続いている。
まだ年端もいかない程にしかない体躯で、ふわふわと浮かぶ可愛らしい姿からは想像もできない攻撃。
いくら見た目が美少女であれど、あんな攻撃をこちらに向けてくるのは恐怖以外の何ものも感じさせない。
水の精霊の有する、透き通った美しさなんて微塵も感じられないその風貌に思わず息を呑む。
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