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 一緒に下りてきて、雑貨店で今日も一人ぼーっとしていた父に一声そうかける。  父は仏頂面で手を上げた。Nはニコニコしていた。  Nはよく私を可愛がってくれたと思う。遊びにしょっちゅう連れて行ってくれたし、お洒落の仕方や勉強のこつも教えてもらった。Nがどうして私なんかとつるんでいるのか、私自身も周囲の気に入らない顔で見守る人間達も誰もわからなかった。  けれど都会の光そのものだったN自身に田舎の臆病な芋共が何かできたはずがないし、次第にNに傾倒して見た目が変わり、自信のついた私への態度もちょっとずつ変わっていった。  しかしNが来てからいいこと尽くしのはずが、どうにも私は日に日に奴への奇妙なわだかまりが腹の中で大きくなっていくのを感じていた。  正直に言おう。  父との仲の良さに嫉妬していたのだ。今ならわかる。  何気なく、さりげなく、Nは私と何かするとき父に声をかけていた。  それは父子家庭において大事な息子を預かるための儀式とも取れたが、私にはどうにも違和感があった。  Nは好きで父に絡んでいるように思えたのだ。  Nとの時に入り込んでくる父を忌ま忌ましく思っていたのか、いちいち父に何か一声かけるNに物足りなさを感じていたのか。     
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