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コーヒーが嫌いだ。カフェインは紅茶かエナジードリンクでいい。
そんな私の頑なな態度は、コーヒー大国で紅茶党は常に肩身が狭い。
「飲んでも死にゃしねえよ」
なんてもう聞き飽きた。
「どうだい、香りだけでも」
奴らは野蛮人を救済する宣教師の心持ちで文明を強いてこようとする。
表面上は愛想の笑みを浮かべてみるが、内心反吐が出た。
飲んでも死なないなら飲まなくても死なない、それが嗜好というものだ。
体質というわけではない。コーヒーの香りは私の不愉快な青春に紐付いている。だから嫌いなんだ。
理屈ではない、これは感情の問題であり、納得の落とし所だ。
親指と人差し指で四角形を作って世界を切り取り、そこにコーヒーを閉じ込める。
シャッターを下ろし、紅茶をすすりながら現像写真とにらめっこをする。
まったく自分でも度しがたい。奇妙な感情だ。
コーヒーカップ、コーヒーの色、コーヒーの香り、コーヒーの味――それらはすべてNに結びつく。
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