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Nはこれも何かの縁だから、と私の家について来たがった。生活はキャンピングカーで済ませるから、泊める所と水を調達できる所、それからトイレの場所を教えてほしい、そんなことを言った。
軽率な私は了承した。忌ま忌ましいが認めよう。田舎の無知な幼稚者は、外からやってきたこのロマンチックな男にお近づきになりたかったのだ。Nがまたたくみに私の自尊心をくすぐったものだから、珍しくも羞恥心が飛んで私にしては大胆な行動に出ていた。
私が根掘り葉掘り聞いてみると、奴は愛想良く自分の事を教えてくれた。
元は有名企業の第一線で働いていた。ある日思い立って車を買い、国を回り出した。それ以来、金が貯まれば旅に出て、旅先で金がなくなれば稼ぎ、当てができれば次の場所へ。そんな生活を続けている。
男なら誰しも一度は憧れる、夢を追い求める生き方――それをちゃんと、しかも格好良く実現させていたのがNだった。
私と言えば、冴えない学生だった。父親似だったのだ。それは劣等感でありつつ、密かな誇りでもあった。私は父親のことを、確かに愛していたのだから。
――Nの話をするなら父の話もしなければならない。
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