4/4
前へ
/29ページ
次へ
「じゃ、ホットミルクは?」  それは父の好物だ、と私は横から口を挟んだ。  少年の私はNに家に寄って、できればそのまま滞在してほしかったので、積極的に自分よりも更に内気な父との仲を取り持とうとした。  父はぎゅっと眉に力を入れたまま、それでもNの手を握り返した。 「……トバイアス。好きにすればいい。水場とトイレは言ってくれれば貸そう。車暮らしは不便だろう」 「よろしく、トビー」  Nは真っ白な歯を見せて、真夏の太陽を思わせる笑みを浮かべた。  父は相変わらず仏頂面のまま、目をそらした。  Nはそんな父のそばかすの浮かんだ顔をじっと見つめていた。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加