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「じゃ、ホットミルクは?」
それは父の好物だ、と私は横から口を挟んだ。
少年の私はNに家に寄って、できればそのまま滞在してほしかったので、積極的に自分よりも更に内気な父との仲を取り持とうとした。
父はぎゅっと眉に力を入れたまま、それでもNの手を握り返した。
「……トバイアス。好きにすればいい。水場とトイレは言ってくれれば貸そう。車暮らしは不便だろう」
「よろしく、トビー」
Nは真っ白な歯を見せて、真夏の太陽を思わせる笑みを浮かべた。
父は相変わらず仏頂面のまま、目をそらした。
Nはそんな父のそばかすの浮かんだ顔をじっと見つめていた。
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