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 視界いっぱいに、雲一つない青空が広がっていた。  ゆるい風が駆けぬけ、そよそよと草花をゆらす音がした。  太陽の日差しが心地いい。六月を過ぎた今の季節にはめずらしい、ほがらかで、やわらかな日差しである。季節が春へと逆戻りしてしまったかのような、気候。  なにもかもが、信じられない思いだった。まるで、大きな掌につままれて、ぽいっとこの場に放り出されてしまったような心境だった。大の字に広げた手足は、しっかりと大地の温もりを感じていると言うのに、なんだか空気中をふわふわと浮かんでいる気がしていた。
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