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 ゆっくりゆっくり、陽がかたむいていくのが分かる。それほどまでに長い時間、俺はこのベンチでぼんやりと空を見上げていた。彼女たちを襲った眠気はいっこうに訪れる様子もなくて、どうしたものかと呆けているしかなかったのである。 「人からの愛情を受けた動物たちがいる世界、か……」  目の前の通りには、ひっきりなしに通行がある。これほどまでにたくさんの動物たちが人からの愛情を受けて暮らしているのだと思うと感慨深かった。 「タマも、」  タマも、この世界に来ていたのだろうか。もし、いま、俺がここでタマに出会えたなら、俺はなんと声をかけるだろう。今はどこでなにをしているんだ、かな。帰って来いよ、かな。それとも、幸せか、かな。  俺はさまざまに思考を巡らせてから、はあ、と大きく息をつく。  タマは自分の意志で出て行ったのだ。もしかしたら、俺と一緒にいることに幸せを感じていなかった可能性だってある。リードに繋がれ、ストレスがたまり、嫌気が差して、とうとう出て行った。そう考えるのが正しいのかもしれない。  きっと今の俺だったら、塀に登ったタマをひょいと抱き上げることができるだろう。屋根にのぼったところで、下手をすれば梯子まで持ち出したかもしれない。幼き俺の後悔は、いつのまにかタマを自分のエゴに縛り付けることを目的としているような気がして、また、ため息。  そんな俺の正面に、二つの影が立ち止った。 「あんた、人間だろ?」
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