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「連れてきやしたぜ!」
ワニが言った。嬉しそうに。その顔は笑っていたと思う。少なくとも、ワニの後ろにいた狼は笑っていた。陽気で、無邪気な笑みだった。ずいぶんと可愛らしい笑顔じゃないか、と思う。それくらい、彼らの雰囲気がやわらかくなったように感じたのだ。
どすん、と床に体を落とされたのはその直後のことだった。
俺の視界に映ったのは白いスニーカー。そこから、女性らしいやわらかそうなふくらはぎが見えて、肉付きの良いむちっとした太ももに繋がる。だんだんと視線を持ち上げて、彼女のショートパンツまでたどり着いたところで、「よう、真也」と声を掛けられ、慌てて顔ごと上へと持ち上げた。
「チャチャ……?」
ニカリと白いキバを見せて笑う、チャチャ。短い茶髪と目付きの鋭さは紛れもなくチャチャだった。それ以上に、彼女がチャチャであることを示しているのが、Tシャツに描かれたフクロウだ。あのフクロウ園の、フクロウ人形。
もしかしたら、このフクロウの絵がなければ、俺はチャチャをチャチャだと判別できなかったかもしれない。どんな姿であってもチャチャを見間違えるわけがない、と言い切りたいのは山々だが、うちの猫が、あの小さかったチャチャが、はち切れんばかりの胸を揺らす、グラビア女優のようなスタイルをしているなどと誰が想像しただろう。俺は、呆気にとられて、口をあんぐりと開いていた。
「お前らもありがとな。こんなに早く見つけてくれるとは思わなかったぜ」
チャチャはそう言いながら、ワニと狼の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。そんな光景を、俺はひやひやしながら眺めていた。なんだか、噛みつき注意、なんて掲げられたオリの中に指先を突っ込む他人を見ているような気分だった。
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