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 晴れた日には、祐二が高校時代に使っていた原付バイクを借りて通勤している。だからなのか、玄関を入るといつも、ヒジキが目を輝かせて待っている。が、扉を開いたのが俺であることに気付くなり、しょんぼりと耳を下げるのだ。  あんな寂しそうなヒジキを見ていられない、と俺が肩をすくめてから、父親はヒジキの散歩時間を少しだけ変更した。俺の帰宅時に、ヒジキを外に連れ出してくれている。しかし、それも、毎日と言うわけにはいかない。父親だって、残業で帰宅が遅くなる日もある。  その日、俺が玄関扉を開くと、嬉しそうに短いしっぽを必死に振ろうとしているヒジキと視線が合った。 「ただいま」  俺はできるだけ嬉しそうに言う。  けれどヒジキは、いつものようにしょんぼりとしてから、くるりと方向転換をした。寂しそう、なんて言葉だけでは表現が出来ないような、哀愁さえ漂っている背中である。その背中を見るたびに、俺は小学生のころに飼っていた白黒猫の『タマ』を思い出すのだ。  だから、俺はヒジキに待たれることが苦手だった。  いや、待たれることが苦手なのではなく、  トボトボとリビングへと向かっていく背中を見るのが辛かった。  ――タマはある日、突然、失踪した。  ずっと自由に外へ行けるようにしていたのだけれど、大ケガをして帰ってきてからと言うもの、庭でリードにつないで散歩をさせていた。あのころの俺と言えば、タマがいつでも目につくところにいることを嬉しく思うばかりだったが、母親は、行動範囲がせばまったことによるストレスを心配していたようだ。しかし、そんな母親の心配もよそに、タマはさほどストレスをあらわにする様子もなく、やんちゃざかりだった俺と弟と一緒に遊んでくれていた。
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