第1章 これまでの話譚

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 杜野秋(まもなく三十路)は、浴室の脱衣スペースに造り付けの洗面化粧台のミラーに向かって、剃り残しがないか熱心にチェックしていた。  昨年のクリスマスまで、まごうことなき汚部屋(・・・)だった彼の居室はそれから数ヶ月経過した現在、誰を呼んでも恥ずかしくない、清潔感あふれる和風モダンテイストへと様変わりしている。 〝ゴミはゴミとして、新たな生を生きている。  だって、ほら見て。昨日より増殖しているよ〟  酔った頭でそんな妄想を繰り広げることも、もうなくなった。  ゴミの山を枕代わりにして寝落ちすることも……
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