第10章 I Feel for You(心中お察しします)

43/47
58人が本棚に入れています
本棚に追加
/277ページ
『今日はいい一日だった。明日も明後日もいい日になる! たぶん(笑)』  なんとも単純だとは思うが、仕事の原動力とは本来そういうものだ。ほんの少しの喜びや楽しみ、視点の変更でいかほどにもなる――あたたかな気持ちで心が満たされていればなおのこと。  だから気づかなかった。一つの安らぎを得ることが、一方では別れにつながることを。  数日後、VCから条件付きで好リアクションをもらい、あらためて企画を練り直していたときだった。  ふと気づいた。最近、堕天使どもの姿を見ない。  秋が望んだわけではなく、あつかましくも、彼らが勝手に居候していたわけだが、自身のケースを含め、長期間つき合ってきたからだろうか、そこはかとなく寂しさを感じる―― 『待て待て、相手は天の遣いだぞ。寂しいってなんだよ、オイ』  人ならざるものに抱く感情ではない気がして自嘲めく秋だったが、すぐに思い直す。 『人間――いや、動物には情がある。神や天使はどうか知らんけど。あいつらだって、そこ(・・)を踏まえてミッション遂行してんだろうし……――って何を考えてんだ、俺は! 楓も紅葉も、べつに友人でも何でもねーし!』
/277ページ

最初のコメントを投稿しよう!