第10章 I Feel for You(心中お察しします)

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 おのが思考の逸脱にかぶりを振り、仕事に意識を戻す。ディスプレイには新着メールの通知。確認は後回しにする。  VCからおおせつかった出資の条件というのは、オンライン学習塾はもはや新しくない(それはもちろん承知している)、だが、最近の世相と近い将来状況を分析すると、学習機会を得る場所は多様化していく可能性がある。そうした事態をむかえたとき、広い意味(・・・・)で教育にたずさわっていくつもりがあるのかどうか、というものだった。  もとより、秋はそのつもりだった。柊一の高校での担当教科(倫理社会)はそのためにおおいに役立つし、可能なら、美術や音楽、体育など、通常オンライン学習塾では対象外の科目も教えていけたら、面白いことになるんじゃないかと思っている。  さらには、子どもや学生だけじゃなく、のちのち社会人も対象にしていければ――  最初からあれもこれもというわけにはもちろんいかないが、ビジョンを大きく思い描いておいても損ではない。柊一の反応はまだ曖昧だが、起業家としてのキャリアは自分の方がずっと長いのだ。
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